大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

水戸地方裁判所 昭和34年(わ)77号 判決

被告人 伊藤昭一

昭一二・一〇・二〇生 土工

主文

被告人を懲役二年に処する。

未決勾留日数中三十日を右本刑に算入する。

理由

被告人は、昭和三十三年八月十一日午前八時頃茨城県北茨城市華川町車駒木地内山道上を通行中たまたま反対側から同所に来かかつた塚田ミツ子(昭和二十年一月十七日生)とすれ違つた際、にわかに劣情をもよおし同女を強いて姦淫しようと決意し、やにわに同女を路傍に突き倒して馬乗りになり、恐怖のため悲鳴をあげる同女の口を手で抑える等の暴行を加えたが、同女に抵抗されて姦淫の目的を遂げなかつたものである。

(証拠略)

弁護人は、本件被害者塚田ミツ子は未成年者であるところ、塚田ミサ子の昭和三十三年八月二十五日付司法警察員に対する告訴は、同人が被害者の法定代理人に当らないので不適法であり、従つて本件公訴はその提起の手続が違法なため無効である旨主張するけれども、塚田みつ子(戸籍上はミツ子)の昭和三十三年八月二十五日付司法警察員に対する供述調書と証人塚田みつ子の当公廷における供述とを併せ考えると、同人は前同日司法警察員に対し本件の犯罪事実を申告し、かつ犯人の処罰を求める意思を表明していたのであり、しかも、同人は当時すでに年令も十三歳七ヶ月で右のような犯罪事実の申告及び犯人の処罰を求める意思表示をなし得る能力を保持していたものと認められるし、また、塚田武雄の戸籍抄本、第二回公判調書中証人塚田武雄の供述記載、証人塚田こと遠藤ミサの当公廷における供述及び塚田ミサ子(遠藤ミサと同一人)の司法警察員に対する告訴調書を総合すると、遠藤ミサは本件被害者塚田ミツ子の養母であるところから、同女の法定代理人である親権者養父塚田武雄の代理人の趣旨をも兼ねて昭和三十三年八月二十五日司法警察員に本件の告訴をしたものであることが認められるから、本件については、被害者塚田ミツ子及びその法定代理人塚田武雄のそれぞれ適法な告訴があつたものというべきであつて、本件の公訴提起の手続には弁護人が主張するような何らの違法も存しないのである。

法律に照すと、被告人の判示所為は刑法第百七十九条、第百七十七条前段に該当するので、その所定刑期範囲内で被告人を懲役二年に処することにし、同法第二十一条に従い未決勾留日数中三十日を右本刑に算入し、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項但書に従い被告人に負担させないことにする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 小倉明 高山政一 羽石大)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例